女子高校で告白(もどき)をされた話 2
結城に身体を許してどのくらいの日が経ったのか、もう覚えてはいない。
秋の終わりの頃に始まり、マフラーで表情を隠せる寒さになった頃。
つまり、部活のコンクール等々が増えた頃。
高1の終わり、来年は先輩となるがゆえに、より強固な部内の人間関係が求められる頃。
私は部活を辞めることを決心した。もう無理だった。
5.退部
顧問と先輩、同期との話し合いが始まった。
呼び出しに、説得、時には泣かれたりもした。
でも、私は自分の身が何より大切だったので折れるわけにはいかなかった。
「すべてのイベントが一通り終わり次第、退部する。ごめんな。」
結城には退部を決めたときに第一に伝えた。
「お前は1度決めたらもう変えないもんな」
否定も深く聞きもしない態度だった。
音楽関係だからか、退部というものは非常に大変だった。
「人間関係ごときで退部をするのか」と何度も顧問と先輩に言われる、進展の見えない呼び出し。
全て自分が招いた結果だとしても、ストレスに違いなかった。
また、その頃に家出をした。部活と家のストレスを同時に抱えるキャパシティが無かったのだ。
つまり、頑張れば辞められる!の一心で、限界を9割がた死にながら生きていた。
6.告白
ストレスは積分される。
退部を決めてからというもの、ストレスのたまり方は急増した。
よく会社のストレスで電車に飛び込む事件があるが、あの頃の私はその事件数のカウントを増やしかねない状態だった。
駅のホームで何度も結城に後ろに引っ張られていた。
私の精神の不安定さに比例して、結城は私の傍にいた。
帰りたがらない私が折れるまで、一緒に電車を待ってくれた。
それほどまでに死にそうな、思いつめた状態だったのだろう。
高校生が帰宅するには遅い時間のホームで、死にそうな目で少し距離をおき、いつも通りその日の感想を言い合い、「私はだめな人間だから」と結城の目を見て口をつぐむ。
いつもこの手の会話で自己を卑下しては、そこから先の言葉を私は言えないでいた。
しかし、その日はいつも通りではなかったのだ。
「私、お前となら付き合える」
私の両肩を強く掴みながら、目を真っ直ぐと見て結城(仮名)は私にそう告げた。
真横で帰宅ラッシュの快速電車が音を立てて過ぎ去るまで、
私は何も言えず、その目をそらせずにいた。