女子高校で告白(もどき)をされた話 3
珍しく、私の話を受け入れもせず、
思いつめた顔で、じっと、私を見ていた。
7.硬直
これは何だ?私はどうしたらいいんだ?
嘘か?いやこんな真っ直ぐに嘘をつく人間がいるか?
そもそも私なんかと一緒にいたらいけないんだ。
こいつは真っ当な世界で生きるべきなんだ。
____いや、第一に結城のこの気持ちを尊重すべきなのでは?
私は彼女と付き合えるか?付き合える。私は結城と一緒がいい。
私の頭が結城と一緒でいることを望んだ。
でも、ただ一言、「私も」が言えなかった。
ジェンダーを気にしない社会を望んだ私だが、
身の回りの百合(実際にいた)を喜ばしいと思っていたけれど、
実際に自分の身に降りかかった瞬間、私は
『結城が男だったなら、告白をして、ここで付き合う選択を取るのに』という思いが、
「私も」を言いたい気持ちを押し込めてしまった。
『男だったなら』、が口を縫い合わせてしまったのだ。
喉には言いたい言葉があるのに、なぜか口が開かない。
泣きそうだった。視界がぼやけていた。
言いたい、言えない、が脳内をぐるぐるぐるぐる回転していた。
目も、肩を握る手も、全てが固まった彫刻みたいな2人を、
次に来た電車から降りたリーマンが、チラ見して通り過ぎていった。
8.返答
どのくらいの時間が経ったのか。1時間は過ぎていたのだろうか。
顔を動かしても目から何も零れないくらいになった時、私は顔を逸らしてしまった。
何も言うことができなかった。
ただ、次に来た何本目かもわからない電車に一緒に黙って乗り、結城は乗り換えの駅でいつも通り、「またな」とお互いに行って別れた。
9.越冬
何事もなかったように、またいつも通りの日常が始まった。
あれは冗談だったのか分からないまま、時間だけが過ぎていった。
退部の話はやや伸ばされて、2年に上がった5月頃の定期演奏会が終わってからと、具体的に日時が決まれば残り1周のマラソンのように気が晴れた。
2年生になり、結城と同じクラスになったが同じ部活の子も多くいた。
クラスという数十人もいる集団ともなれば、グループができる。
結城は部活の子のグループに、私は他の友達とつるむようになり、夏にはほとんど話しかけなくなっていた。
___席も離れた私には、ただ窓際の彼女を鉛のような脳と共に、遠目で見ることしかできなかった。